演劇講座 第6回「身体の動かし方

 「早く続きを書け」と励ましのメールを沢山いただいてるんですが、なかなか書けなくてすみません。旧演劇講座が分かりにくかったかなと始めた新演劇講座なんですが、一回旧演劇講座に書いちゃってるんで、どうも書きにくくて…てな訳で久々の更新、身体の使い方。

 前回までで、気持ちの持ち方、セリフ(言葉)の出し方をやってみました。で、演劇の練習をする訳ですが、「どう動いたらいいのか分からない」と言う声も時々聞きます。

 解決法は簡単です。動きたくなるまで動かなければいいし、動きたくなれば動けばいいだけです。ではさようなら…(オイオイ)

 演技をしてる時に「どう動こうか?」などと考えていたら、それは前回までやっていた演技をしている時の気持ちの持ち方からずいぶんとはずれてしまいます。しかし経験が浅い場合など、気持ちが動いただけじゃなかなか身体までついてこないという事もよくありますし、相手役に向かって腰だけを曲げ、顔を突き出すようにセリフを喋っていると言うのも良く見る光景です。

 気持ちが動いたら、自然に身体も動くようにするためにはどうしたらいいんでしょうか。

 気持ちの動きと身体の動きは非常にシンクロしています。気持ちが動くと身体は動きます。日常生活では何でも無い簡単な事です。ところが、演技になってしまうとなかなか身体は動かなくなります。

 どのくらい気持ちと身体がシンクロしてるか。例えば、小指を立ててなよなよとしながら「ファイトー、いっぱーつ」とやってみましょう。…無理ですね。シンクロしてますから先に身体で軟弱な状態を作ってしまうと、気持ちだけ頑張ろうとしても気持ちまで軟弱になってしまいます。

 そこで、シンクロしてるのをいい事に先に身体を動かして見ましょう。

 まずは簡単な動作から。例えば手のひらをグーで握る、又は握った手で小さいガッツポーズをしてみる。足を一歩踏み出してみる、ひざをぐっと曲げてみる。等々…

 気持ちは伴わずに身体の動きだけでいいですから何度も繰り返して、身体になじませてしまいましょう。(これはこれで身体と気持ちはシンクロしてますから、身体を動かしてるうちに気持ちまで「エイヤッ」と動くこともあったりします)

 その動きが身体になじんできたら、セリフと一緒にやってみます。やりやすいのは、やはり気持ちが大きく動く時です。

 「ジュリエット、好きだっ」の「好きだっ」の部分で、グーを握る、ガッツポーズ、一歩踏み出すなど身体の動きを意識しながらやってみましょう。何度か繰り返すうちに言葉に力が入ると意識していなくても自然に身体が動くようになってきます。

 次にもう少し大きな身体の動きをやって見ます。バンザイのように腕を上げる、又は大きく腕を振り下ろす。2〜3歩あるく、ダッシュから急に止まる等々。
 これも小さい動きのときと同様、身体になじんできたらセリフといっしょにやってみます。

 「ジュリエット」で走り出し、突然急停車、そこですかさず「好きだっ」なんてどうでしょう。

 この状態が自然に感じられるようになったら、今度は試しに同じセリフを動かずにやってみましょう。どうですか、とても気持ち悪くないですか?

 動かずにセリフを言って違和感があるようならシメタものです、次にそのセリフを言う時には自然に身体は動いています。

 舞台上での動きはこの気持ちが動くと身体が動くという事が基本になります。より大きく気持ちが動けば手を振り下ろすだけでは足りなくなり、位置を移動(何歩か歩く)したくなるでしょうし、舞台上でより目立つ位置に移動したくなるかもしれません。

 簡単な小さな動きから徐々になじんでいけば、気持ちが動いたから身体が動く、大きく気持ちが動いたから身体も大きく動けるようになっていきます。
 また気持ちの動きが色々に変われば(嬉しい、悲しい、思い入れたっぷり等々)当然気持ちとシンクロしている身体の動きは色々と変化していくようになります。

 まずは気持ちが動くと身体が自然に動くよう単純な小さな動きから慣れていきましょう。また、動きそのものが意味を持つような複雑な動きは、気持ちと身体がシンクロするようになってから考えることにします。
 気持ちが動くと、つい手を振り下ろしてしまう、つい一歩踏み出してしまう。ワンパターンでかまいません、こんなところから始めてください。

 身体の動かし方は、「どう動こうか?」なんて考えて動いちゃいけないし、身体が動くようにと下手な理由付けをしてはいけません。例えば「あっちに〜」と言って指差したり、あっちの方向に歩いたり、「あなたと私」なんて時にあなたと私を身振りでやって見せるなんて演技はほとんど学芸会です。

 身体が動く理由は、気持ちが動いたから、これだけです。後はそれと逆に演出家からここへ移動してとか、振り返ってなど動きをつけられる場合も出てくるでしょう。その場合も同じです。身体と気持ちはシンクロしています。気持ちが動けば身体が動きますが、当初やったように身体を動かせば気持ちも動いてきます。
 その動作をすると気持ちがどう変化するのか、気持ちがどのように変化したからその動作が出てきたのか。演出家に言われたからではなく、まるで自分自身が考え出したかのようにまで錯覚して演技して下さい。

 最後に、気持ちや身体が緊張していては動くものも動かなくなります。面接や試験のような精神状態では身体はおろか気持ちも動きません。祭りやコンサートの時のようにリラックスしつつテンションを上げ、楽しく演技しましょう。

 と言ったところで今回はさようなら…

(2001年3月21日)

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